遺産分割について(その1)
12月 21日
みなさん,こんにちは。弁護士の福本昌教です。今年も残すところあとわずかとなりましたが,いかがおすごしでしょうか。
さて,平成28年12月19日,最高裁判所は,「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる」旨の決定(判例変更)をしました。
従前,預貯金は,当然には遺産分割の対象となるものではなく,相続人間においてこれを遺産分割の対象とする旨の合意があって初めて遺産分割の対象とすることができると解されていました。したがって,この合意がない限り,預貯金は遺産分割を待つまでもなく,相続開始と同時に当然に分割されると解されていました。
今回の決定(判例変更)は,遺産分割の対象となる財産の範囲に関するものといえます。
そんな年末のトピックスに刺激を受けて,当職は,これから遺産分割について,複数回の投稿を試みたいと思います。これからの投稿は,「わかりやすさ」を重視したいと思いますので,「厳密にいうと不正確」な部分もあろうかとは存じますが,ご承知おき下さい。また,不定期の投稿になるかと思いますが,お付き合いいただければ幸いです。
1 遺産分割とは?
そもそも「遺産分割」とは,被相続人(亡くなった方のことです。)が死亡時に有していた財産(遺産)について,個々の相続財産の権利の承継者を確定させる手続であるといえます。共同相続(2人以上の相続人が共同で相続する相続形態をいいます。)の場合には,相続財産が相続人の相続分に従って複数の相続人に承継されます。そこで,相続財産について各相続人の単独所有にするなど,終局的な帰属を確定するために,遺産の分割を行うことになります。
2 遺産分割の対象は?
遺産分割の対象は,未分割の遺産です。上記の最高裁判所の決定(判例変更)は,この点に関するものといえます。
3 家庭裁判所の利用
遺産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議することができないときは,各共同相続人は,その分割を家庭裁判所に請求することができます。まずは,遺産分割調停を申し立てることが多いでしょう。
4 遺産分割調停の流れ
調停とは,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。わかりやすくいうと,裁判所での話合いです。この話合いの流れとしては,①主体(相続人の範囲),②客体(遺産の範囲,評価),③分割割合,④分割方法という順序で決めていくことが多いかと思います。次回以降の投稿は,この①から④について,簡潔にご説明したいと思います。なお,①から④までの説明について,途中で順序が少し入れ替わることもありますので,ご承知おき下さい。